フォースタートアップスに新チーム「CxO/ハイレイヤー支援室」が誕生した。2020年3月にはIPOを実施し、6月からは採用を加速。すべては市場へのアウトプットをより大きくするためだ。チームを率いる六丸に、今、改めてスタートアップのコアとなるCxO人材支援に力を入れることで、社会のアップデートを図っていく決意を聞いた。
六丸 直樹(Naoki Rokumaru) 執行役員 兼 タレントエージェンシー本部GM
パソナキャリアに9年間在籍し、インターネットセクターの立ち上げと事業拡大に貢献。最年少でマネージャーに就任するなどして活躍した。その後、社会によりイノベーティブなソリューションを提供したいと考え、フォースタートアップス(株)へ。初期メンバーとしてタレントエージェンシー事業をけん引。CxO/ハイレイヤーを中心に数々の支援実績を上げてきた。
―今、このタイミングで新チームを立ち上げた理由を教えてください。
六丸:シード、アーリーからミドル、レイター、Post IPOまで、フォースタは全フェーズにおけるCxO/ハイレイヤー支援を通じて社会のアップデートを図るという決意を、改めて打ち出すためです。
というのはこの1年余り、我々のリソースも限られる中で、分散させず、勝ち筋の高いチームに弊社リソースを投入する方針をとってきました。結果としては100名以上の規模のスタートアップに成長した企業の社員の1/3が弊社経由で入社しているケースや、幹部クラスがほぼ弊社経由であるという実績が増えてきています。一方で、結果的には資金調達額の大きなミドル、レイターステージの企業に集中した為、フェーズに偏りが出ていた反省もありました。
我々は、これまでに通算170名以上のCxO、ハイレイヤーの支援実績があります。例えばシードのフェーズで、「CEOしかいないけど、資金調達したいからCFOがほしい」といったニーズは確実にありますが、直近では十分ご支援できていませんでした。以前は支援できていたのですが、直近は手薄になってしまっていました。社会のアップデートを推進していく上で、スタートアップとしてはタイムリーに最適な人材を採用できることが重要であり、そのソーシングを実行できるのがフォースタの強みです。その原点に帰り、改めてCxO/ハイレイヤー中心とする支援に特化したチームを組成した、というのが今回の背景です。特に、若いフェーズの企業のコアとなる人材、CxOの支援を加速したいと考えています。
そのために、弊社の採用も加速しています。弊社は3月に上場しましたが、上場も採用の加速も、市場に対するアウトプットをより大きくするための手段でしかありません。徐々に我々のリソース拡充も進み、全フェーズ、なかでも若いフェーズのCxOを重点的に支援する専門チームを立ち上げられる状況になってきました。
―実際、若いフェーズの企業にCxOを支援し、スケールした事例はありますか。
六丸:いくつもありますが、私が支援したなかで印象に残っているのは、あるシェアリングエコノミーの企業で、アーリーフェーズの社員数20名程度のときにCOO候補として入社した方のケースです。事業は堅調に伸び、今は100名弱の組織規模になっています。
その方は、ここではAさんとしますが、ある有名企業に新卒で入社しました。元々、エースだったのでしょう。様々な部署を経験して鍛えられ、最終的には経営企画部門のマネージャーで、役員候補としても名前が挙がっていたそうです。
ただ、Aさん自身は、自分で事業をやりたい、経営に関わりたいという気持ちが強くありました。お会いしたときは、事業の内容よりも「誰とやるか」を重視している印象も受けました。何人ものヘッドハンターから声がかかっていて、リファラルも含めて当時、多くの内定を持っていました。上場企業もあれば、年収面でかなり厚遇なオファーもあるというなかで、でも「何か違う」とおっしゃっていました。
Webプラットフォームの企業のほうは、将来、創業者に変わって経営を任せられる人材を探していましたが、なかなか難しく、1年経っても見つかっていない状況でした。サービス自体は、当時は本当に粗削り。ただ、創業者の方が大変なビジョナリストで、Aさんと合うのではないかと思いましたし、Aさんが加われば間違いなく大きな力になるはずでした。
ある程度の関係性がAさんと私の中で出来始めたタイミングで、「私を信じて一度会ってもらえませんか?」と言い、Aさんも「このサービスは、本当にこれでイケるの?」という反応ながら、私が薦めるのであればと会ってくれました。すると思った通り、双方にピンと来るものがあり、スムーズに話が進んで入社することに。
最初はマネージャーで入り、執行役員、取締役と直近では代表取締役社長にまでキャリア形成をされております。
伝え聞いた話では、出資しているVCも「Aさんが入って、あの会社は劇的に変化した」と言っているそうです。成功確率がグッと上がったと。もちろんAさんだけの貢献ではないにしても、実際に上場手前のステージまで成長されているので、その会社にとって唯一無二の人材が、事業成長を大きく加速させた典型的な例だと思います。
―CxO/ハイレイヤー支援室ではどのような活動をするのでしょうか?
六丸:事業がグロースするタイミングにおいて、都度人材ニーズは変わってきます。フェーズ事の傾向もありますが、極論を言えば当然ながら企業毎に異なります。
例えば、シードフェーズでCFOが必要になる。資金調達がうまくいかないと採用もマーケティングも実行できません。
また、レイターフェーズでCSOが必要になります。事業が多角化し、適切な戦略を描かなければ更なる事業成長につなげられません。CxO / ハイレイヤーのアサインが出来なければ、組織拡大ができずに結果的に事業拡大が遅れることになります。
そのため、よりタイムリーに体制組閣の支援をすべく、CxO/ハイレイヤー支援室を設置することで、企業及び個人のニーズを常時アクティブに把握していきます。
―他社にも採用支援サービスはありますが、フォースタならではの強みは何でしょうか。
六丸:現在、フォースタには約50人のヒューマンキャピタリストがいて、全員がスタートアップを中心とする成長産業に特化して活動しています。このマーケットに、この規模で取り組んでいる会社はありません。
しかもヒューマンキャピタリストは、どんどん増えている。一人当たり、月に約30名の方と新規でお会いできるように努力しているので、×50人で約1500名のスタートアップにフィットする可能性のある方々に、新たにリーチできている計算になります。となると、スタートアップのニーズに、最もスピーディーに人材をおつなぎできるのは恐らく我々でしょう。コンスタントに、スピーディーに対応できるという点は大きな強みだと思います。
ほとんどの創業者、経営者の方は「人」で苦労した経験があるはずです。なので、シンプルに、数々の支援実績があり、様々なフェーズの様々な会社の組織課題、経営課題に向き合ってきた我々の経験がお役に立てると思います。今、1ヶ月当たり1500人と言いましたが、それが12カ月分、しかも既に事業部時代から入れると7年やっているので、その積み重ねによる人材のネットワークは膨大です。この経験とリソースで、必ず何らかの貢献ができると思います。
―長く取り組んできて、スタートアップへの関心が高まってきている感触はありますか。挑戦したい個人の方へのメッセージもお願いします。
六丸:確実にありますね。そもそもスタートアップという言葉が生まれたのが、リーマンショック以降。リスクマネーが日本に流れ込み、投資を受けて事業をグロースさせる手段が普及し、スタートアップという言葉も出てきました。一番のインパクトはメルカリでしょう。彼らの急成長、上場を目の当たりにして、スタートアップというキャリアの選択肢が「アリなんだ」と、広く世間で思われるようになりました。
終身雇用や年功序列も崩れ、何が安定で何がリスクか、捉え方も変わってきました。そのような時代の流れや環境変化に敏感な人ほど、アーリーアダプターとして自分の立ち位置を変えてきています。スタートアップという言葉も、ポジティブに捉えられるようになってきました。
我々は日々、VC、CVCなどの投資家をはじめ、スタートアップのエコシステム関係者とコミュニケーションをとっています。VCだけでも数十社。それぞれから情報を得て、それによりマーケットにはどのような事業カテゴリーがあり、どのような企業があり、その序列はどうなっているのか、構造化して捉えています。我々なら挑戦したい方々に、勝つ可能性が高く、キャリアにプラスになる企業を確度高くご提示できます。
一方で、序列が上だからいい、下だから悪いということはありません。上場可能性が基準なので、上だとフェーズは後ろになります。人によっては、「カオスな環境で頑張りたい」とか、「ストックオプションを得たい」といった志向もあるでしょう。そのような人なら、若いフェーズがいい。個人の人生設計における仕事観、キャリアの志向なども踏まえながら、一緒に可能性を探りましょう。
ーwithコロナで世の中は変わりましたか。
六丸:そうですね。国として解決しなければいけない社会課題が噴出し、それをビジネスとして解決する動きも確実に出てきています。医療、介護、福祉の領域、密を解消するプロダクト、人がやっていたことをドローンなどに置き換える動きなど色々あります。
そのような領域に対して投資が集まり、市場のニーズが高まり、それに伴って人が集まる。この数カ月でお金も人も集まる領域が、よりシャープになってきました。社会課題へのリーチができている事業は、今後も伸びていくでしょう。挑戦の場も、人材を求めている企業もあります。それらをしっかりとつないで、社会のアップデートを加速していきたいと思います。