リクルート、住友不動産、Kaizen Platformでキャリアを積み、メタップスでは執行役員として活躍した鈴木聡子がfor Startupsにジョインした。スタートアップ業界の最前線を走り抜けてきた鈴木がfor Startupsでの新たな挑戦を語る。
キャリアというキャリアではないのですが、私と仕事との関係は、大学時代から始まります。大学時代からとにかく働くということに多くの時間を使っていました。学生なのでアルバイトですが、ガソリンスタンドから郵便局、コンビニ、ファーストフード、イベント司会、イベントコンパニオン、インテリアコーディネート等々。私にとって、働くことは学ぶことであり、とてもポジティブな活動でした。一方で、働くことにポジティブになりきれない声をあげる人も多く見てきたので、常々、世の中を『働くことをポジティブに』したいと思っていました。
そんな思いを持ち始めた頃に出会ったのが、1社目の方々です。OGOBの方問わず、お会いする中で、人のポテンシャルを強く信じている方が多い印象を受け、私が大切にしている『働くことをポジティブに』することが実現できそうだなと思い、ご縁あり、新卒でお世話になることになりました。
ーー 新卒で入られた時期は、ちょうどリーマンショックの頃ですね?
そうなんです。ちょうどリーマンショックが重なって。その後、入社半年で退職することになりました。今でこそ社会の大きな変化だから仕方がないと思う部分はありつつも、会社に残っている人もいたのでとても悔しい思いは今も変わりません。今考えるといい経験をさせていただきましたと言えますが、当時はそんな風に思うことはできず、社会に対して明るいものが見えなくなり、自分から自信という言葉が消えてしまっていました。
そんな時に出会ったのが、住友不動産です。当時は、とにかく働きたい一心でした。選考中に東日本大震災があり、当初想定していた職種ではなかったのですが、営業としてのオファーをいただき入社を決めました。ここから不動産営業としてのキャリアが始まりました。そして、私のスタートアップとの関わりもスタートします。
ーー あの『Morning Pitch』に繋がるんですね!
よくご存知ですね(笑)。あまり世には出ていませんが、関わっていましたよ。住友不動産に入社したばかりの私はまだ心の傷も癒えていなかったため自分を出しきれていなかったんです。入社して半年、配置換えがあり運命は変わっていきます。上司が兼松さんという方に変わったのです。『とにかく思い切りやれ!俺がなんとかするから!』と背中を押してくれる方でした。それがきっかけとなり、私は翼を得たかのように動き始めることができました。
当時、不動産営業として私のメインクライアントは大手企業でした。営業として大手のお客様と共に成果は残しながら、兼松さんと共にメガベンチャーやスタートアップも担当させていただき、数多くの起業家の方々、投資家の方々、VCの方々にお会いする機会をいただきました。そして、その活動が『Morning Pitch』立ち上げにも繋がっていきます。
当時住友不動産のビル営業部にはベンチャー担当というものは存在しておらず、むしろ対象外の領域でした。しかし、ご縁ありベンチャーの方々にお会いしていく中で、彼らの志や眼差しに自然と惹かれていきました。世界を変えていこうとしている人たち、人間の価値をも変えようと企てている人たちの波動にはやはり痺れますよね。そして、私は彼らの役に立ちたいと強く思ったんです。
その一方で、オフィス移転の提案しかできない状況もどうにかしたくて、その枠を超えて様々なイベントの運営サポートに入らせていただき、自らもイベント主催をするようになる中で『Morning Pitch』の立ち上げに参加したという経緯があります。毎週木曜日朝5時起きでSkyland Venturesの木下さんやデロイト トーマツ ベンチャーサポートの斎藤さん、野村証券の塩見さんと奮闘していた日々が懐かしいですね。当時は登壇する起業家を探すのに苦労したものです。立ち上げ期に関わってくれたスタッフメンバーは今や立派に自分の会社を持って活躍していたり、自らの個性を活かして活動をしていたりして本当に素敵な仲間たちに恵まれたなと思っています。かけがいのない時間ですね。
そこから約3年間、不動産営業としてスタートアップと関わってきました。その過程でどんどんスタートアップ界隈の人たちとの距離が近くなっていくと共に、もっと近くで彼らを応援したいという思いも強くなっていきました。
ーー なるほど。そこからスタートアップに自ら飛び込んでしまおう、というチャレンジに繋がったんですね。
声をかけてくれたのがKaizen Platformのすどけん(須藤CEO)でした。もう住友不動産を辞めることは決まった後の話ですが、すどけんからたまたま電話をいただいたのがきっかけです。まだKaizen Platformが5-10名くらいの時で、社内の公用語も英語だったし、1通のメールで契約獲得してしまうようなクライアントを心底親身に考え抜く猛者の集まりでした。正直、入社にたじろぎましたが、温かく迎え入れてくれ、ベンチャーの門を叩きました。
その後、メタップスグループの広報としての活動が始まります。当時のメタップスは事業が右肩上がりで成長を遂げていたにも関わらず、世間一般にはまだ知られていない、知る人ぞ知る企業でした。社長の佐藤から急にメッセージが入ってきたんです。「うちで広報しません?」って(笑)。連絡をいただき、広報をするからにはメンバーに会いたいと申し出て、お会いする機会をいただきました。
メタップスはとても人間味あふれる集団で、常に前を向き、過去の栄光には捕らわれず突き進むスタイルを持っていました。だから、自分たちは表に出る必要はないと。それはそれでかっこよかったのですが、私はとてももったいないとも思ったんです。実績はアピールポイントになるし、次のクライアントとのきっかけになるものです。言葉と同じで伝えなければ伝わらない。こんなにかっこ良い人たちをもっと世の中に知って欲しい、自分が役に立つのかもしれないと思い、メタップスに広報として入りました。
これは思い返してみれば、住友不動産時代に上司の兼松さんが私にやってくれたことと同じなんだろうなって感じます。前に出ることに臆病になっていた自分の背中を押してくれた兼松さんがいたからこそ、その後で飛び回れた自分がいたように、メタップスという世に知られるべき人たちの背中を支えられたらと思いました。メタップスの人たちの場合は臆病なわけじゃなく、そういうスタイルだったので、私のおせっかいといえばおせっかいなんですが(笑)この4年間、本当にたくさんのおせっかいをしてきてしまったなと。上場時には着物を着てくださいとか、イベントをやりましょうとか、このおせっかいを快く受け入れてくれたメンバーに今は感謝しています。
「たまご」ですかね。
ーー 卵‥‥?
はい、卵です。私には育てなければならない3つの卵があると思っています。まずはfor Startups自身がまだまだ成長可能性を大きく秘めた卵であるということです。
ヒューマンキャピタルという新しい価値貢献にチャレンジしながら、その枠をさらに越えてブランディング支援や顧客紹介、出資等の成長産業支援メニューを拡充しようとしています。成長企業からすると優秀な人材を確保することほど優先事項の高い経営課題はありません。伸びている企業のCEOほど、採用に関するOKRには当たり前のように入っています。スタートアップにとって優先順位の高い経営課題にダイレクトにソリューションを提供できるヒューマンキャピタル領域において、for Startupsに並べる企業はそうそう出てこないかと思います。そういう意味でこの会社の立ち位置はとても良い所にあると思います。
一方で、経営陣・メンバー含め個のパワーはあるのに、それを最大限発揮させる体制がまだ整っていないのも事実です。また、マーケットにおける情報を潤沢に持っているにも関わらず、転職候補者にだけ伝えられていて、マーケットに対してその情報から読み取れる視点や考えを発信する力がまだまだ弱いと思っています。この辺りは私がこれまで経験してきたことからも入社後に貢献ができると。
ーー なるほど。残り2つの卵も気になります。
二つ目は、クライアントという卵です。これまで事業会社にいたが故に、他社のサポートができないという歯がゆさを感じていました。スタートアップ産業を見渡すと、自社のみならずたくさんの成長可能性を秘めたスタートアップがあります。自社の成長にコミットしながらも、クライアントであるスタートアップにも翼を授けられる仕事ということであれば、こんなに素敵なことはないと思っています。住友不動産でスタートアップに関わってきた時から、その波動に痺れてきた身としてはとてもワクワクするチャレンジです。
ーー では、最後の卵とは?
日本です。日本という大きな卵を今一度大きく育て、翼を与えることで羽ばたかせたいという想いです。先進国と言われていたのももう昔の話。日本は今衰退の一歩を進み始めてしまっているかもしれないと感じています。そこに対して一番影響力高く広く貢献できると思ったのが、for Startupsというポジションです。
まだまだ未熟ではありますが、for Startupsという企業と共に成長し、スタートアップが主役である成長産業を大きくし、日本という国をより発展させ、未来を創る。このストーリーにワクワクしました。独立の話も多くいただきましたが、結論私は自分が主体的にチームを作ることよりも、誰かが目指しているものをサポートする方が向いていると思っています。
まさに卵を孵化させ、翼を与え、育てていくように。同時にチームという力を信じていて、誰とどのタイミングで組むべきかによって世の中に対して大きなインパクトを生み出せるかどうか、レバレッジがかけられると思っています。今このタイミングにおいて、for Startupsで自分の時間を投資することが、世の中に価値を還元する最善の選択だと信じています。
ーー 素敵なお話の数々、ありがとうございました!ご活躍、楽しみにしております。