フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームを作り、スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。
株式会社Mobility Technologies(MoT)は、「移動で人を幸せに。」をミッションに、タクシーアプリ『GO』、キャッシュレス決済の『GO Pay』など日本のモビリティ産業をアップデートする様々なITサービスを提供しています。2020年4月に旧JapanTaxi株式会社と、DeNAのモビリティ事業が事業統合し、新生MoTが誕生しました。すべてのヒトやモノが安心、安全に移動できる世界を目指し、進化を続けています。
今回は、韓国出身で2009年に来日し、2020年10月にMoTに入社した金志妍(キムジヨン)氏に、参画の経緯や同社の魅力、海外から見る日本のスタートアップについて話を聞きました。金氏は、日韓を通じて決済や認証周りのサービスで豊富なキャリアを持ち、現在、『GO Pay』の開発チームで活躍中です。子育て中のママ社員でもあります。
金 志妍 氏
韓国で大学を卒業後、約5年、SIerでキャリアを積む。海外で開発業務に挑戦したいと考え、2009年に来日。ゲーム開発会社で決済系の開発に従事。その後、GMOインターネット株式会社、サイバーエージェント(CA)などで開発やPM/PLとして活躍し、2020年10月にMoT入社。
30歳目前で技術を頼りに挑戦することを決意。日本のスタートアップはリスクが小さい
日本に来た経緯を教えてください。
金:韓国で大学を卒業して、約5年、SIerで働いていました。ネットバンキングやカード決済システムなどの大規模プロジェクトに携わり、決済の知識を学ぶことができました。とても充実していましたが、30歳になる前のタイミングで何かほかのことをやってみたいと思ったのです。それまで一度も海外に出たことがなく、海外で働いたり勉強したりといった考えがなかったのですが、29歳のときに「30歳になる前に何かやっておかないと、私の人生はどうなるのか」と、好奇心と憧れと挑戦したい気持ちが出てきました。といっても、経験のないことで挑戦するのは難しいので、自分がやってきたプログラミングで何か世界とつながれないかと考え、海外で開発の仕事をする可能性を探るようになりました。
ちょうどそのタイミングで、日本でゲーム会社の決済系を担当する人を探しているという話を聞き、ご縁を得て日本に来ることになりました。その会社で日本に慣れつつ、日本のシステム開発を学び、その後は、転職もしながら一貫して決済系の開発に携わって今の会社にたどり着いたという経緯です。
韓国と日本のスタートアップで、違いはありますか。
金:日本に来て10年になります。個人的な感想ではありますが、感じたのは日本のほうが、スタートアップ企業でも安定しているということ。韓国のスタートアップはリスク対策や雇用に懸念があることもあり、だからこそ働く人は頑張らないといけません。特に、若い人にたくさん仕事をさせる会社が多く、私の最初の会社も周りも、ハードな会社は多かったですね。
もう1点、違いを挙げると、韓国では仕事の分野が細分化されていました。例えば開発も、デザイナー、プログラマー、コーディングの担当、 コーディング内容の整理、DB管理、サーバー管理など分かれていますし、さらにほかの人の分野に手を出すのが駄目な雰囲気があります。なので、自分の担当分野については専門性をもって細かくできるけれども、それ以外はやりにくい。なので、日本に初めて来たとき、自分は「エンジニア」だと感じました。韓国ではプログラムだけをやるプログラマー。日本に来て一連の作業に触れ、エンジニアとして経験を積めるようになりました。
金さんのように、海外の方に日本のスタートアップをキャリアの選択肢として考えてほしいです。実際、そのような方も増えています。
金:そうですね。日本のスタートアップは事業計画を立て、投資の計画があり、メンバーをどれくらい増員し、どこまでに何をするという段階的な目標がはっきりしています。その会社で働くということは、自分の人生をその会社に賭けることになるので、その意味で、リスクは小さいと思います。働き方も、日本企業は規模の大小に関わらず、細かいところまで決まっていることが多いです。海外から来るということは、リスクを覚悟で挑戦するわけで、不安は大きいでしょうが、日本の場合はその挑戦が損にならない。様々なことを勉強できると思います。
日本に来てもう10年になるのですね。
金:はい。前々職のGMOインターネットが長く、約7年いました。そのときのチームリーダーが素晴らしい人で、チームの作り方、仕事の進め方、仕事に臨む態度、問題が起きたときの解決方法など、ただの開発者としてだけではなく、今後、リーダーなどより上を目指す上で何を学ばなければいけないかを、いろいろと知ることができました。
その方が転職してサイバーエージェント(CA)に行き、その人を追って転職しましたが、1年半の勤務で少し違和感を感じたので、転職を検討しました。
子育てとの両立を目指して転職。自由度が高く自分の貢献が目に見えそうなMoTへ
CAから休職を経て、転職を検討されていますね。
金:CAを辞めて、ちょっと休もうと思ったらコロナ禍に。結局、少し長めに休むことになりました。コロナが落ち着いてきたところで活動を始め、LinkedInに自分のプロフィールを登録したら、フォースタからメッセージが来ました。
メッセージをもらってすぐに、カジュアルに話をする機会を設けてくれました。気軽に話せる雰囲気を作ってくれて、やりたいこと、分野などを詳細に聞いてくれました。ほかのエージェントと話すときは、「これがやりたいです」「では、これはいかがですか」といったやりとりで終わることが多いですが、フォースタの場合は、やりたい仕事について、自分の気持ちを話せたという印象を持っています。
提案された会社も、スタートアップにフォーカスしているということでユニークなものでした。他のエージェントは、挙げてくる会社も重複することが多く、フォースタだけが違っていました。おかげで素敵な会社に出会えました。
他の会社も選択肢にあった中でMoTを選んだ理由は。
金:1つは、選考前にカジュアル面談を設定してくれて、入社したら同じチームになる人と話す機会があったこと。そこで仕事の内容や雰囲気、今後、会社が目指すところなど幅広く聞けて、その感触がよかったのです。
2つ目は、私がやりたいことを掘り下げて聞いてくれたこと。普通は「会社が必要な人は、こういう人で…」となると思うのですが、「やりたいことは何ですか」と詳しく聞いてくれました。
3つ目が、元々、私がユーザーだったこと。MoTに統合する前の『JapanTaxi』アプリのゴールド会員で、よく使っていました。いいところも今一つなところもわかっていて、「自分が入ったら、この部分はこう改善できるのではないか」と想像しやすかったので、これは働いたらおもしろそうだと思いました。
本人の意欲ややりたいことを最も大事にする、というのがMoTの特徴です。それが、採用活動にも表れていて、私はMoTが使用しているものとは違う言語での開発を経験していたのですが、担当いただいたヒューキャピタリストの山下さんは私の決済の経験がMoTのサービス発展に必要だと考えられたそうで、私とMoTの双方にポジションを提案してくださり、ご縁につながりました。
前職は大企業でしたが、スタートアップに移ることへの不安はありましたか。
金:前職を辞めて新しい会社を探すとき、自分はどんな会社に行きたいのかと考えました。大前提は子育てと仕事が両立できること。加えて、会社の規模より自分がやりたい仕事を重視したいと思いました。
もう一点、希望を言うならば、自分の働く力が見える、自分がやることによって会社の発展に力になっていることがわかるところがいいなと。大きな会社では、自分がどんなに頑張っても、それがよく見えません。でも、スタートアップなら目に見えやすく、やりがいを感じられると思いました。なので不安はなく、むしろ期待のほうが大きかったです。
実際に入社し、自分の存在や頑張りが会社の成長に貢献できている実感はありますか。
金:まだ、そこまでの実感はありませんが、プロジェクトを終えたり、開発がうまくいったりするなかで、サービスを安全に運営できるようになったと感じられる場面は多いです。現在は、タクシーアプリ『GO』の中で行う決済部分を担当していて、新しい決済手段の導入や既存の機能の改善など、安定的にサービスを提供するための開発を行っています。決済ができないとユーザーの方々に大変な迷惑をかけてしまいます。安全に動いているところを見ると、きちんとできているなと手応えを感じます。
実現されたかった子育てとの両立については、いかがでしょう。
金:働き方の自由度が高いので、両立しやすいです。子育てでは、どうしても外せない用事などがありますが、そのときは、そこの時間を抜けて、その分は後でやるといった対応ができます。早く上がりたい日は、その分、早く始めて終わらせるなど、時間も自由。入社前のカジュアル面談でも、自分の効率のよいやり方でスケジュールを組めると聞いていましたが、本当にその通りでした。今月はすごく忙しかったから、来月は少し休みも入れて体調管理しながら仕事をするといった具合に、自分でリズムを作れる点もいいですね。
MoT社員の平均年齢は35歳。就学前のお子さんのいる社員が、男女問わず多く、各自のスケジュールには普通に、お迎えのためミーティング不可能な『お迎えブロック』の時間帯があります。本部長などの役職者も同様です。「周囲の理解がある」というレベルではなく、会社全体が子育てを当たり前なので、とても働きやすいです。
『GO』普及の肝となる『GO Pay』を担当。今後も次々と新機能をリリース予定
ご入社されてから手がけられているお仕事を教えてください。
金:具体的には、キャッシュレス決済の『GO Pay』を担当しています。『GO Pay』は、タクシーに乗っている間にアプリ内で決済できる機能で、備え付けのタブレットにスマホを近づけるだけで簡単に支払い手続きができるというもの。到着したら降りるだけでいいので、急いでいるときやお子さん連れのときなどに本当に便利で、好評です。これは、アプリ内に登録してある決済情報を利用していて、ポイントは、呼んだタクシーだけでなく流しのタクシーでも、『GO Pay』のタブレットが設置してあれば決済できること。これは画期的で、移動を劇的に便利にする、『GO』普及の肝になる機能と言っていいと思います。
実は、これ以外にも便利な機能をどんどん開発していて、まだ内容は詳しく話せませんが、これから次々と画期的なサービス、機能がリリースされる予定です。
決済は本当に根幹となる機能ですね。やりがいも大きいのでは。
金:はい。仕事もおもしろいですが、MoTのいいところは、自由度がとても高いこと。在宅勤務のメンバーが多く、時間もフルフレックスなので、本当に自由に働けます。進め方も、会社としていつまでに何をするという大きなスケジュールはあるのですが、そのなかで、何をどのタイミングでやるかは自分で判断しますし、内容も、改善できる部分やそのやり方なども自分で決められます。
自分なりに課題感を持って「これをやりたいです」と訴えたときに、駄目と言われることは一切なく、「それをやるためにはどうすればいいか」から始まって、「こうやりましょう」とすり合わせ、スケジュールを決めて進めていきます。自分がやりたくてやったからこそ、やりがいを感じられる部分は大きく、やり終えたときの充実感に加え、何か不具合があったとしても責任感をもって改善に臨めます。そのような働き方はいいなと思っています。
MoTの特徴としては、チームが細かく分かれているんですね。少人数だから自由度が高く、そのかわりに、それらを結合する部分は丁寧に、細心の注意を払って行います。このような進め方だからだと思いますが、MoTはコミュニケーションをとても大事にする会社です。
前職も前々職も、とても意欲的な会社で素晴らしかったのですが、どちらかというとテクニカルスキルを重視する文化があったと思います。それに対してMoTは、もちろんスキルも大事だけれども、その前に人と人であるという価値観を感じます。システム内で機能を結合するときも、まずメンバーの目線を合わせて臨むところがあり、そのような雰囲気も魅力に感じています。
MoTは2020年4月に、JapanTaxiとDeNAの事業部が統合して発足しましたが、率直なところ、組織の一体感などはどうでしょうか。
金:やはり完全に一体化しているとは、まだ言い切れないかもしれません。とはいえ、日常のコミュニケーションはスムーズで、「こうやりましょうか」といった話も気軽にしていますし、まったく支障はありません。
会社側もきめ細かく目配りしていて、定期的なアンケートを実施しています。そこで気になっている点や改善したい点を書いたり、ほかのチームとこんなことがあったという話をしたりすると、すぐに様々なフィードバックがあって、会社の方針や、そうなっている背景などをざっくばらんに話してもらえます。私としても不安感がなくなり、会社への理解も深まり、安心して仕事ができています。
私もそうですが、これからどんどんMoTとしてのメンバーが入社します。JapanTaxiだ、DeNAだというのも徐々になくなって、新しい文化ができていくのだと思います。今はその過渡期にあり、会社も社員も意識して一つのチームになろうとしているところだととらえています。
今後の目標も教えてください。
金:日本に来て、エンジニアとしてより幅広くいろいろな勉強をすることができました。それをMoTで活かし、これからもユーザーさんの利便性に直結するサービスを生み出していきたいと思っています。
今後も、決済系の開発に従事していきたいです。今まですっとやってきたことなので。決済機能をより安定的にするために、新しい技術も取り入れていきたいですし、その先には、今後、何年もかかるかもしれないし、できるかもわかりませんが、先ほど言ったように、自分の働きが会社に貢献していると実感できるようになりたいです。新しい決済のやり方や開発に貢献できたらいいですね。
金さんの生み出されるサービスのローンチが楽しみです!ありがとうございました!!
インタビューご協力:株式会社Mobility Technologies
for Startupsエンジニアプロデュースチーム