2021年、新卒でフォースタートアップス(以下、フォースタ)に入社した石井 優紀子(Yukiko Ishii)。今でこそ目標に向かって邁進するが、振り返ると就職活動時も新卒1年目も、しばしば迷い、立ちどまった。「日本のために働きたい」という漠然とした思いはあるものの、自分が何をすべきかわからずにいた就活時。順調と思いきや壁にぶつかった新卒1年目。そんな当時の振り返りと今後の目標、就活生へのメッセージを聞いた。
▲留学時にフランスのルーブル美術館を訪れた時の様子(写真左が石井)
「当時、やりたいことがなくて迷っていました」と就職活動中の自分をふりかえる石井。といっても意欲がなかったわけではない。むしろ想いはあるものの、それを言語化できず、迷子になっていたのだ。ピンと来ない就職活動をしていたとき、メンターとして支えてくれていた社会人の先輩から紹介されてフォースタを知った。代表の志水の話を聞き、ようやくぼんやりとしていた思いが焦点を結び始めた。
石井は言う。「元々新しい価値を生み出すことに興味があり、その1つの手段としてスタートアップには漠然と興味がありました。ただ、人生を賭けてでも取り組みたいと思えるミッションを持つ会社には出会えませんでした。そんなときに、フォースタに出会いました。『さまざまなスタートアップのパートナーになる』―これこそが社会に新しい価値を生み出し、かつそのインパクトの大きい仕事だと思いました。同時に、好奇心が強く、飽きっぽくもある私が、ずっとワクワクしながら取り組める仕事だと感じました。」
説明会や面接で目にするフォースタ社員にも心を惹かれた。堂々と信念を語り、それに向かって全力疾走している。活気にあふれ、夢を持っている。それは、学生が抱く社会人のネガティブイメージとは真逆だった。
1年経った今、改めて石井は言う。「あのときの直感は正解でした。実際に入ってみると『リアルMBA』と社内外で言われるほど、目の前で日本の最先端のビジネスの急成長を見られる貴重な環境です。しかも傍観者ではなく、パートナーとして伴走し、信頼関係を強め、スタートアップエコシステムの重要な一員となれるのです」。この1年、石井は業界のこと、個社のこと、あるいはヒューマンキャピタリストとしての姿勢や具体的な手法も、さまざまに学び、実践を重ねた。
フォースタの新卒社員へのオンボーディング期間は半年。スタートアップやVCに関する業界知識のインプットのほか、ヒューマンキャピタリストの仕事の進め方を、座学やロールプレイング、OJTで学ぶ。転職希望者への対応なども、最初はほぼ先輩頼りだったが、次第に一人立ちしていった。
石井がはじめて一人で行った転職希望者へのカウンセリング(面談)は、まだ不慣れなこともあり、お世辞にも話し方が上手とは言えなかった。石井も「学んだことを自分の言葉に置き換えられていなかったこともあり、型にはまった説明のようになってしまいました」と振り返る。しかし、紹介した企業は的確で、結果的にスムーズに進み、石井の支援者は入社に至る。
「カウンセリングはまだ上手くなかったのですが、お伝えした情報には価値がありました。入社したその方からは『石井さんがいなければこの会社との出会いはなかった、ありがとう』と言っていただき、自信になったと思います。入社までの支援プロセスは、私はまだ経験が足りていないので、速さを意識しました。メールは5分以内に返すなど自分にできることを懸命にやって信頼関係を築きました。周りの先輩にも相談して、お力を借りながらご支援が叶いました」。真摯な対応と、ためらわずに周囲を巻き込む力が奏功した。いずれも石井の美質だ。石井はこの後も順調に支援を進め、オンボーディングが終わる9月末には、新卒同期8人の中で支援実績1位となり、新人MVPを獲得した。
立ち上がりは極めて順調だったが、この後試練が訪れる。恐らく、順調過ぎたために陥ったスランプだろう。「何のためにするか」という目的を見失ってしまったのだ。モチベーションが下がり、結果も出せなくなった。石井は反省を込めて振り返る。「フォースタならではの付加価値を追求するための時間でした。当時はフォースタでやる意義や私がやる意味を見失い、社内外で誉れとされるようなご支援からは遠のいていました」
たとえば、「フォースタならCxOを支援すべき」と思い、自分の力量を顧みず、CxO候補者となり得る方々とコミュニケーションをとることに注力したこともあった。結果、深い話ができないために途切れてしまう。成果が出なければやる気も落ちる。八方塞がりだった。
そんなスランプからの再起は――。「先輩たちが、いろいろな解をくれました」と石井は言う。苦しんでいる石井に、周りの人がいろいろな機会を設けてくれ、石井自身も機会を拾いに行った。
1つは、ラジオの英語MC。オンラインラジオ配信『CIC LIVE』の番組『for Startups-挑戦者たちのリアル』史上初の英語で進行する回にて、帰国子女で英語が堪能な石井が司会に指名された。同じ頃、初めて担当企業を持った。打ち合わせなどで直にスタートアップと接する機会が増え、伴走し、ともに課題を解決する意義や喜びを知った。もちろん視野も広がった。
前々から興味があった自社メディア『EVANGE』の取材にも同行。元々得意だった写真やクリエイティブ領域で介在価値を発揮。また、12月からは志願してエンジニアプロデュースチームにも参画した。自分でコードを書けるようになるほど掘り下げてエンジニアの勉強をしている仲間の姿などにも大いに刺激を受けた。「いろいろな機会を与えてもらい、改めてフォースタの価値や自分の可能性に気づきました」(石井)
この時期を経て、石井は1つの気づきを得た。「世の中の仕事は大きく二分される。作業か、使命か。仕組みの中で働く人か、仕組みをつくり上げる人か。そして、なんのスキルも経験もない新卒ができることは作業プラスアルファ程度です。それをいかに早く価値提供に変えていけるか、そのための適切な努力が必要だと気づきました」
石井の間違いは、「作業」の状態で思考停止し「これに意味があるのか」と思ってしまったこと。価値へと昇華させるのは自分。自分の視野の狭さ、志の低さを自覚し、徐々にスランプを脱した。「改めて1から学ぼうと、CxO候補となり得るハイレイヤーの方のカウンセリングは先輩に同席してもらい、話し方を見直しました。背伸びをしてハイレイヤーに注力するのもやめて、スタートアップを成長させる可能性をもっている若い世代のご支援に注力していきました。数年後にスタートアップの責任者クラスとして活躍する方々なので、いま私ができる支援として意味のある価値提供ができると気づきました。」
結果、実際にカウンセリングの時から話しているだけで優秀だと感じた同世代の転職希望者を自らが担当する企業に支援できた。スキルマッチではたどりつけない、素質を見抜いた支援だった。改めて、山あり谷ありながら「振り返ると非常に成長したと思います」と石井は言う。その裏には、たくさんのインプットと経験がある。「引き出しが増え、自信がついたことが大きいと思います。そして、目指す未来も明確になりました」
▲上司である町野(写真左)をはじめ、先輩方との交流からも学びを得ている(写真右が石井)
石井の目指したい未来とは。「Japan to Globalで圧勝するスタートアップを生み出し、その成功事例を周知し、日本人が安心して挑戦できる文化・イノベーションを促進する文化を作ること。そのためには、世界的にも革新的なミッションに取り組む企業を育てることが必要で、創業時から言語、制度、待遇などの面でグローバル基準の組織づくりをしなければいけません。」と石井。
まさにフォースタの出番だ。というのも、いち企業の話ではなく、日本全体で何とかしなければいけないから。経済界も政府も巻き込んで解決しなければならない。フォースタが今、切り拓いている領域だ。
壮大な目標を掲げる一方、足元では4月から新卒社員のチューターを務めることになった。「貴重な機会を任せてもらえて嬉しいです。フォースタの魅力を伝えることができるし、自分自身の責任のキャパシティを広げることにもなります」と、石井は自分にも新人たちにも期待を寄せる。仕事の意義を見失った体験も、きっと役に立つに違いない。自分が育てた強い仲間とともに夢の実現に向けて歩む。
2年少し前は、石井も就活生だった。経験を積んだ今、過去の自分と重なる今の就活生に言いたいことは「みなさんが見えている世界は狭い!」に尽きるという。加えて「いろいろな社会人の方に時間をもらって、壁打ちしてもらうと良い」とも。就職活動も格好の壁打ちの場。石井がフォースタにめぐりあったように、動き続けていれば何か道が拓けるだろう。石井自身も、喜んで壁打ちの相手になってくれるはずだ。