学校よりも、ファッションに熱中した蕪木 俊太(Shunta Kaburaki)の大学時代。青山のセレクトショップでアルバイトやモデルをするなどファッションの世界に情熱を注いできた。卒業後は真剣にファッションで事業を起こしたいと思ったが、まずは一般企業へ。その夢は変わらず持ちつづけ、今、フォースタートアップス(以下、フォースタ)で多様なスタートアップ企業や人材と関わるなかで、少しずつ現実味を帯びてきた。自分のWILLを持って目の前のことにのめり込んでいれば、きっと道は拓ける。そんな蕪木 俊太のストーリーを紹介する。
ファッションが好き。蕪木は学生の頃、ファッションで事業を起こしたいと本気で思っていた(今も思っている)。想いを持って表現している人々がしっかりと稼げる世界をつくりたい。だが、当時からアパレル業界は斜陽産業と言われていた。デザイナーやクリエイターでさえも、食べていくのは大変な状況だ。蕪木自身の周りもまさにそうだった。その理由を「アパレル業界が原因ではなく、所得が上がらなくて人々が服を定価で買えないから」と考えた蕪木は、この経済状況こそ何とかしなくてはいけないと心に誓った。
片やアメリカではIT産業が勃興している。蕪木はさらに考えた。「日本も、グローバルに戦うベンチャーなどの新しいマーケットが生まれなければ変わらない。新しいマーケットを生み出すことができれば、そのビジネスモデルはファッションにも横展開できるはずだ」
とはいえ、新卒の就職活動時は、ベンチャーやスタートアップ企業のことはよくわからない。「そのときは、ならば上場企業に行けば、そこで新規事業をつくれるかもしれない。そもそもビジネスパーソンとしての基礎も必要だと考えて、一部上場の人材サービスの会社に就職しました」と蕪木は振り返る。
新卒で入ったその会社では運よく、優秀な学生とスタートアップ企業をつなげる新卒採用支援サービスに携わることができた。スタートアップを伸ばすことで、将来の日本の経済成長につなげることを目指すサービスであり、蕪木は張り切って営業した。結果も出していた。が、途中で会社の方針が変わってしまう。というのもスタートアップにはお金がない。マネタイズが難しいサービスであることから、会社はスキームをそのままに、ターゲットをエンタープライズの次あたりの位置づけの企業に変えたのだ。つまり、理念としてはまったく別物のサービスになってしまった。
蕪木は自身の掲げる理想像と乖離した状況を目の当たりにし、このままここにいるべきではないと考えた。そのとき、目に留まったのがフォースタだった。営業でスタートアップ企業を探す際に『STARTUP DB(スタートアップデータベース)』を使っていたことから、この運営会社に行けば何かヒントがあるのではと考えたのだ。
早速、フォースタにコンタクトをとった。知れば知るほど、フォースタのミッション・ビジョンは蕪木の思いと一致。特に社名でありビジョンでもある「for Startups」の言葉は、蕪木の心をストレートに射抜き、入社の決め手となった。「スタートアップをよくして日本を成長させたい。新しいマーケットをつくり、お金が回る世界を実現したい。それがファッションの未来につながると思っています」と蕪木。
その思いを実現する手段として、「ヒューマンキャピタリスト」というまだ耳慣れない仕事を選んだ。それは最初から衝撃だった。蕪木は振り返って言う。「ちょうど入った次の日に勉強会がありました。起業家が来て、自分の目の前で熱をもって『こんな世界をつくりたい』と話していました。年齢も近い方だったので自分との間に大きな差を感じました。なぜ自分はこのようになれないのかと思い、とにかくスタートアップについて調べ、インプットしていくところから始めました」
並行して、スタートアップの経営陣になれそうな人材を探し、スカウトメールを送った。いわゆるハイレイヤー層だ。何とか会えることになっても、最初は話についていけなかった。蕪木は、そうなると俄然、力が湧くタイプだ。対等に話すためにインプットをますます加速させたが、蕪木にとって、それはまったく苦ではなかった。
「フォースタで実現する世界の先に、僕が叶えたい夢がある。会社の目標を追っているだけではなく、その先のWILLがあるから、むしろ楽しくインプットできました。そうすると次第に候補者さんに会うことも楽しくなりました。自分の知らない世界を知り、1人ひとりにストーリーがあり、この人たちと新しい産業をつくっていけたら楽しいと、心から思うようになったのです」
当初、猛烈に企業情報をインプットしたように、遡ると学生時代にアパレルの仕事にのめり込んだように、人並外れてとことんやるのが蕪木だ。行政サービスのDXを手がけるスタートアップ、A社の支援に奮闘したときもそうだった。「A社に行政サイドの人材、特に中央官庁出身者が加われば事業が加速する状況にありました。そのときは半年間で50人の官僚の方に会いました」
その半年間は、ほかの仕事は横に置き、ひたすら出会いを求めて官僚にメッセージを送った。話についていくために、再び猛烈にインプットもした。「オタク気質なんです。ひたすらインプット、アウトプットしつづけるうちに、だんだん彼らの話がわかるようになりました。総じて感じたのは、彼らは本当に日本の再成長を願い、行動しているということ。でもやはり、スタートアップのことを知らないので、外の世界に行こうと考えると、とりあえずコンサル会社にいく方が多い。これを変えたい。この優秀な方々に、自分が次のチャレンジを示せたらと思いました」
蕪木にとって、その象徴がA社だった。50人に会い、結果的に適任の人材とのご縁を取り持つことができた。その方は、転職意向はあまりなかったが、行政のDXに対する課題感は強く持っていた。目指す世界はA社と一緒のはず。転職の話は別としても、出会えば何らかのプラスになる。そんな思いで引き合わせたところ、両者は意気投合し、早々に入社に至った。現在、その方はA社で大活躍している。
蕪木は言う。「この方の場合は、たまたま入社に至りましたが、決して転職ありきで会っているのではありません。会えば、この人と一緒にどう産業をつくるかと考える。入社に至るのは1つのオプションに過ぎません」。半年の間に会った50人も、決してそれで終わりではない。50人と会うことで、改めて行政に課題が多く、中の人たちも真剣に考えていることがわかった。ある日、この活動が協業やスタートアップへのご紹介など、何らかの形で実を結ぶこともあるだろう。それがこの仕事のおもしろさでもある。
1人、A社に注力をしていた頃のこと。蕪木は突然、採用担当を命じられる。1mmも迷わず拝命した。嬉しかった。それはフォースタが大きくなることに直結する仕事だからだ。現在、ヒューマンキャピタリストもつづけながら、新卒と中途採用の両方に奮闘している。
が、採用活動は一筋縄では行かないものだ。蕪木が言う。「大企業からスタートアップに挑戦したいと考えている人はまだまだ少ない印象です。それは、僕らのやっていることや、スタートアップのマーケットの成長の可能性や必要性、意義がまだ伝わり切っていないことを意味します。これを打開し、まずは僕らがどんどん成長して、日本の明るい未来をつくらないと」。GAFAのような企業群は、優秀な学生がこぞって起業する社会から生まれてくるもの。その前段階には、大企業を辞めてスタートアップに挑戦したり、起業して成功したりするロールモデルをつくる必要がある。それをフォースタが、蕪木自身がやらなければという思いがある。
新卒採用では、何年か前の自分の姿を思い出す。「学生の頃は就活本を読んで、売上で会社を判断しました。それしか見極める術を知らなかったんです。今の学生の皆さんには、その会社よりマーケットや世界のトレンドを見てほしい。それから夢を見てほしいですね。僕は大学の頃、夢を語ると意識の高い人扱いされました。中学生や高校生の頃は夢をもっていた人でさえも大学生になったら現実を見はじめてしまう。もっと、どんな夢があってどんな世界をつくりたいか考えて、夢のためにどう進めばいいかと考えられるように手助けをする使命がフォースタの採用にはあると個人的に思っています」
そして将来の選択肢の1つに、フォースタがあれば嬉しい。今の日本は社会課題だらけ。起業家は、その社会課題を解決したいと強烈に願い、戦う。夢を夢で終わらせない強い意志を持つ人たちだ。「その起業家とともに戦い、マーケットを、世界をつくるのが僕ら」と蕪木は誇らしげに言う。フォースタは、誰もが声高に夢を語る会社だ。誰も夢を持つ人の足を引っ張らない。蕪木のファッション業界を元気にしたいという夢。フォースタでさまざまなビジネスを見聞きするなかで、自分なりにできそうなことのイメージもわいてきた。遠回りしたようで、結果的にもっとも近道を選んで夢に近づいているかもしれない。
「夢というとチープに聞こえるかもしれませんが、何か成し遂げたいことがあれば来てほしいです。それは採用だけではない。お会いすると『フォースタよりも、あの会社の方が』と思う方もいます」。蕪木はフォースタだけでなく、全スタートアップへの窓口でもある。学生さんも、社会に出て働いている人も、挑戦したい気持ちがあれば蕪木に会ってみるといい。きっと何か楽しい道が待っている。