社内カンパニーを経て、2016年9月に創業したフォースタートアップス株式会社(以下、当社)。これまでスタートアップ各社に1,500人を超えるCxO・経営幹部層をご支援することで、日本の再成長を担う成長産業を支援してきました。そんな当社が今、注力する領域は「宇宙」。すでにイーロン・マスク氏のスペースX社が展開する、衛星インターネットアクセスサービス「スターリンク」で地球上のほぼ全域をカバーするなど、熾烈な競争が始まっています。国内では、J-Startup(官民によるスタートアップ支援プログラム)の第5次選定31社のうち8社が宇宙企業が選ばれるなど、注目・期待ともに高まっている。
そのスペースX社に一矢報いようとしている企業が、世界で最初に超小型人工衛星(キューブサット)の軌道投入に成功した東京大学の中須賀研究室(現、中須賀・船瀬・五十里研究室)から生まれたスタートアップ、株式会社アークエッジ・スペースです。JICA専門家等の国際協力機関にて南米やアフリカの自然資源管理や人材育成に従事したのち、外務省や内閣府で国の宇宙政策に関わっていた福代 孝良氏が2018年に創業しました。超小型衛星コンステレーションの企画・設計から量産化、運用まで総合的なソリューション提供を行う同社は、日本のみならず世界の宇宙ビジネスをリードする存在になりつつあります。
そんな同社に早くから注目し、2021年のシードラウンドから出資しているのがインキュベイトファンド株式会社。同社はアークエッジ・スペースだけでなく、数々の宇宙スタートアップを支援し、オールジャパンの宇宙産業の構築を目指しています。当社も2023年から人材支援を行ってきましたが、2025年2月にグループ会社、フォースタートアップスキャピタルを通じて出資。人、資金のハイブリッドキャピタルとして、さらに連携を深めていこうとしています。
アークエッジ・スペース代表取締役CEOの福代 孝良氏、インキュベイトファンド代表パートナー 赤浦 徹氏、フォースタートアップスからは代表取締役社長 志水 雄一郎とヒューマンキャピタリストの齋藤 祐矢の4名で、日本の宇宙ビジネスの現在と展望について語り合いました。
株式会社アークエッジ・スペース
代表取締役CEO 福代 孝良 氏
インキュベイトファンド株式会社
代表パートナー 赤浦 徹 氏
フォースタートアップス株式会社
代表取締役社長 志水 雄一郎
シニアヒューマンキャピタリスト 齋藤 祐矢
失われた30年を経て瀬戸際にある日本。宇宙産業で復権を目指す

――インキュベイトファンドの赤浦代表との出会いと、タッグを組むに至った経緯を教えてください。
福代:はじめて赤浦さんと出会ったのは2017年の『S-Booster』(内閣府主催の宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト)です。まだアークエッジ・スペースを立ち上げる前で、資金調達や資本政策など一切分かっていませんでした。その頃は、スタートアップというものは利益の追求が先行しがちな方が多くいるイメージを持ってしまっていて、自分とは違うと思っていました。
その後、アークエッジ・スペースを創業し、シードラウンドでインキュベイトファンドの出資を受けるのですが、そのときは、赤浦さんがこの日本で宇宙産業をつくっていくという強い思いを持っておられると知り、上から目線のようで恐縮ですが、このような方であれば信頼できるし、一緒にやっていきたいと思うようになっていました。詳しい人に聞くと、赤浦さんは連戦連勝だと。その赤浦さんに出資の話をいただき、非常によい方に巡り合えた、よい機会をいただいたと思っています。そこから今までもずっとご支援いただいているという経緯です。
――日本の宇宙産業の実情についても教えていただけますか。
福代:これは普段、赤浦さんがおっしゃっていることですが、日本はよく「失われた30年」と言われます。一言で言うとそれはITで日本が負けたということ。今はまた次の新しい産業としてAIや宇宙が注目されています。宇宙も決して優位にあるわけではありませんが、宇宙産業が基盤の産業になろうとしているときに、今は日本がそこに入れるか入れないかの瀬戸際です。
これは私が起業したきっかけでもありますが、従来、日本の宇宙産業は官需産業の色合いが濃いものでした。しかし、世界は完全に民間主導で動いています。そのなかで、東京大学の中須賀先生(東京大学の中須賀真一教授)がかつて、世界で初めて超小型人工衛星(キューブサット)の軌道投入に成功しました(2003年に世界で初めて軌道投入)。今、宇宙は世界を見渡すと既に民間産業として発展しています。日本は一番にこうした実績をもちながら民間産業として発展していません。私は元公務員でしたが、この状況を変えていかなくてはならないと決意し、公務員を辞めました。
もちろん超小型衛星だけではありません。ほかのいくつかの領域でも日本は百数十兆円と言われている宇宙産業に入れるか入れないかの瀬戸際に来ています。我々がここで頑張らないことにはこの先も失われ続け、成熟から衰退へと向かう日本が見えています。
赤浦:私もまったく同じように思っています。
福代:はい。普段赤浦さんが言っていることですから(笑)

赤浦:私は宇宙に可能性があると思って今、チャレンジしていますが、一方で日本は相当まずい状況にあります。それはひとえにスペースX(イーロン・マスク氏が設立したアメリカの航空宇宙メーカー)。今、『スターリンク(スペースX社が運営する衛星インターネットコンステレーション)』の軌道上の衛星は6,000基を超え、さらに衛星間の光通信にまで既に着手しています。「宇宙のことはもうスペースXに任せればいい」というくらいに圧倒的な状況です。
振り返ると1989年に、NTTが時価総額で世界1位になったことがありました。それは、通信ネットワークを担う光ファイバーを開発したことへの期待でしたが、今は光ファイバーを張り巡らすことなく、海の上でも山の上でもどこでもつながる高速通信ネットワークをスペースXが1社で持っているのです。なぜそれができたかというと、それを実現する人工衛星とその輸送手段をすべて持っているからです。だから、打ち上げのほとんどがスペースXですし、1キログラムあたりの総コストもスペースXだし、実際に稼働している衛星もスペースX、その運用を含めてスペースXとイヤになるほど一社の寡占状態です。
以前、新聞に「イーロン・マスクがロシアに配慮した」と書かれているのを見ました。私はそれを読んですごく違和感を覚えた。なぜ民間の、当時はまだ国の関係者でもないイーロン・マスクがロシアに配慮するのか。意味がわかりません。それほどの影響力を持ってしまっているということです。
この状況を、指をくわえて見ているわけにはいきません。となったとき、我々民間のチームワークで日本政府と連携しながら、国一丸となって、一矢報いる何かをしなければなりません。現時点では、打ち上げはスペースXに頼んでしまっていいでしょう。ただし、人工衛星は独自に持ち、独自の通信ネットワークをつくり、独自にそれらを運用する必要があります。ここまでできる会社はどこか。輸送コストは1キロいくらの世界なので、打ち上げる衛星は小さいほうがいい。小さくて高性能な衛星をつくり、それをコンステレーションとして構築でき、通信の運用まで含めて完遂できる会社。まさにアークエッジ・スペースがそのポジションにいます。
世界で一番に超小型人工衛星を軌道投入した中須賀研から生まれた会社で、先生の近年の教え子のほとんどがいる。さながら株式会社中須賀研です。そのアークエッジ・スペースが指をくわえて見ていることなく、通信ネットワークをつくりに行こう。実際、福代さんはもう政府機関と連携し、海の通信ネットワーク(衛星コンステレーションを通じて海上の船舶と双方向のデジタル通信を行うことができる次世代の海洋情報インフラ)を受注しています。技術的にも開発可能です。
福代:まさに今、開発しているところです。
赤浦:このように今やれるベストなことを、国も絡めて仕切れる人はどこにいるかと見渡したとき、福代さんがいました。日本のイーロン・マスクがいた!というところです。
――改めてアークエッジ・スペースの事業概要や目指す世界と現在地などをお聞かせください。
福代:我々が目指すのは、先ほど赤浦さんもおっしゃったように、完全にスペースXの一人勝ちでイーロン・マスクが世界を凌駕している状況に一矢報いること。トランプ政権がウクライナ支援をやめ、イーロン・マスクがスターリンクを止めると言えば、戦況も世界も変わるほどに絶大な力を持ってしまっています。私達はそのような、誰か一人の意思で一方的に変えられる世の中はよくないと思っています。我々がきちんと世界をつなげていく力を持たなくてはいけません。
今、我々が取り組んでいる一番大きなプロジェクトは、海をすべてデジタル化してつなげるものですが、まだイーロン・マスクと戦える段階には達していません。ただ、それでも我々なりのやり方でより世界が民主的に、安定的につながっていけるインフラの第一歩を海で進めています。だんだんと実績を積み重ね、我々の能力を向上させることで、最後には世界をつなげることができるはずです。
宇宙は、地上のインフラがないところでこそ役に立ちます。海の上でもそうですし、アフリカや南米などもそう。あるいは大災害で電力も無線も機能しなくなったとき。つながらないところに我々がインフラをつくり、それによって経済圏を拡大することができます。アフリカはこれから2100年までに人口が30億人を超えると言われ※、最後のフロンティアと呼ばれています。しかし現状は、eコマースを展開しようにも通信手段もアカウントもありません。ですが、つながればいろいろなことが可能になります。
究極的には月でしょう。我々が基礎のインフラをつくれば月にも入っていけます。我々のミッションは「衛星を通じて、人々により安全で豊かな未来を」です。人類の活動の場をつなげ、広げ、それを民主的かつより安全な開かれた形でつくっていくことが責務だと思っています。
※出展:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/b17b51af306ca379.html
――2024年12月には量産モデル衛星の軌道上運用も開始しましたね。
福代:そうですね。第一歩です。大きな構想を掲げても我々だけでできることは限られているので、その辺りもオープンに、ITの世界と同じです。Microsoftに勝とうとGoogleもLinuxもみんなオープンソース化しました。我々もできるだけ一緒にできる仲間を増やしていこうとしています。
当社の量産モデルとしての6U衛星汎用バスの設計・開発も、今まで宇宙とは無関係だった産業のメンバーが加わり、一緒に取り組みました。従来は東大・中須賀研究室のメンバーなど、ずっと工学の勉強をしてきた人や、宇宙関係の専門家しか手がけていなかったものです。こうやって産業の構造やサプライチェーンも構築し始めたところです。実際にきちんと完成し、動いたので、ここから何十基と上げていく最初の一歩が踏み出せたのではないかと思っています。
宇宙産業に勝機あり。日本の製造業人口の厚みに大きな可能性

――フォースタートアップスはどのように関わっていくのでしょうか。
福代:赤浦さんに「福代さんにフォースタートアップスの志水さんを紹介しましたっけ?」と言われて、すぐに紹介してもらったことを覚えています。当社は今でこそ約100名の規模ですが、当時は30名で、幹部人材の採用などかなり「人」に苦しんでいました。
そのときは、フォースタートアップスが何をしてくれるところかあまり存じ上げなかったのですが、聞くと、例えば同じ宇宙産業のスタートアップ、ispace社ですごくいいと言われている人もフォースタの紹介で入ったらしいと知り、そこから始まりました。今日、改めて確認してみたら「この人がいないと困る」と思うような、我々の成長において枢要な人材を、かなりフォースタさんから紹介していただいていました。あの有名なTVCMではありませんが、まさに「こんなすごい人がウチに!」といった人たちが、フォースタさんからご支援いただいています。
赤浦:志水さんは「『勝たせてください』と赤浦さんが頼むなら勝たせますから」と、いつも言うので、このときも「勝たせてほしい会社があるんですけど」とお願いしたのでした。志水さんはどう思わましたか。
志水:そうですね。私がというよりは、ヒューマンキャピタリストの齋藤が頑張ってくれています。私が思ってることは一つ。私はヘッドハンターですが、これは、何かのペインを特定したら、その解決のために誰に起業させてどんなチームを組成し、そこに必要な投資をどう持ってきて、戦略をどう組み合わせて、そして、その会社をどう日本の競争力にするか、人類のイノベーションにつなげていくか―ということを自在にできる仕事だと思っています。
でも自分は万能ではないので、重要なのはよりよいインプットのできる相手、ともに時代をつくれる皆さんと組むことで、そんな仲間は赤浦さんに決まっています。赤浦さんがつくりたい世界観を一緒に実現したいですし、そこに自分たちが貢献できることの一つが「人」です。
人の可能性は無限大で、本来、イーロン・マスクにだって我々はなり得るはずなのです。なれないのは、もちろん自分たちの運や才能の限界もあるかもしれませんが、一番の理由は、自分がそうなれると思わないから目指さないこと。そんな世界をつくれると思っていないからやっていない。これが一番の課題です。
私は、可能性があるのだからやろう、社会を変えようと言いたいし、実際に、先にやっていらっしゃる皆さんがいるのなら最大限応援したいです。その応援は一人ではできないから仲間が必要で、だから国内最大の、将来的には世界最大のスタートアップ支援企業をつくろうと、齋藤も含めてフォースタートアップスを必死につくっているところです。その過程でアークエッジ・スペース様とご一緒させていだけることは本当に嬉しく思っています。
赤浦:アークエッジ・スペースにはどのような方を紹介してくださってるんですか。
齋藤:元JAXAの人工衛星開発のプロジェクト統括や、人事マネージャーなど、幹部クラスの方々を複数名ご支援いたしました。
福代:みんなウチのかなりエース、中枢です。本当に「どうしたらこのような人を連れて来られるのだろう」と思う方が来るのです。フォースタさんが当社の立ち位置や存在、目指すところなどをわかってくれているので、そのような人が来てくれるのでしょうね。
我々はどちらかというと発信が得意ではなく、当社の魅力や目指していることを伝えきれていないと思う場面が多いのですが、面接に来てくださる人の中には、私より当社のことがわかっているような方がいるのです。そういう方たちは「フォースタの齋藤さんからいろいろ聞いています」と言うので、すごいなと思っています。
志水:齋藤は宇宙の可能性に賭けていて、どう支えていくかということにコミットしていいます。すべての産業を勝たせようとするのではなく、一つか二つに絞って産官学民みんなで連携して競争力をつくろう、というのが私の持論ですが、齋藤は宇宙という産業でそれをしています。
――そのモチベーションはどこから来るのでしょうか。
齋藤:実は私も、元々エンジニアをしていました。エンジニアからすると、やはり宇宙はトップクラスの夢の舞台です。縁あってフォースタートアップスに入り、最初に担当させていただいた企業が宇宙産業のスタートアップでした。そこに1名ご支援させていただいたのですが、まったく宇宙産業とは関係のなかった方で、そのときに宇宙産業の間口の広がりと可能性を実感しました。
というのも、日本の製造業は多くの労働人口を抱えています。日米を比較すると、IT産業はアメリカのほうがずっと多いですが、製造業はアメリカの1200万人に対して日本は1100万人。自動車産業に限るとアメリカの90万人に対して、日本はなんと500万人です。となると宇宙産業ならば、日本もここから始めて勝てるのではないか。そう思ったのが、宇宙産業に注力し始めたきっかけです。
赤浦:なるほど。「個社を」というよりは産業を創出するという思いで取り組んでいただいているのですね。
齋藤:はい。
――「人」に加えて、このほどシリーズBの資金調達でフォースタートアップスキャピタルも仲間に加えていただきました。その背景も教えてください。
福代: 一つは、フォースタさんへの認識が変わったことですね。フォースタさんからは何人もご紹介いただいて、最初は人材紹介の会社なのだと思っていました。ところが『GRIC(フォースタートアップスが主催する成長産業に特化した国内最大級のグローバルカンファレンス)』に参加させていただいて、志水さんたちがやっていることなどを聞くなかで「日本において産業を作っていくことを目指して、様々な産業を巻き込んでスタートアップを支援している会社なんだ」と認識が変わりました。その後もいろいろなところで話を聞き、単に人材を紹介してくれる会社ではなく、一緒に産業をつくっていく仲間、パートナーなのだと思うようになりました。
ビジョンの下に集まる仲間たち。オールジャパンで宇宙産業を盛り上げる

――今後の展望を教えてください。
福代:イーロン・マスクやスターリンクなどと戦って宇宙産業をどうつくっていくか、と言うには、我々はまだ程遠いと思っています。今の私たちに必要なのは、「志」や「ビジョン」をしっかり立てること。それを立てることでみんなが応援してくれて、一緒に実現に向けて進んでいけると実感しています。これがもし「我々はここまでしかできません」と範囲を決めているとしたら、そこまでしかできません。我々はこれを目指すと決めたら、人も集められるし、応援してくださる方々もいます。そのようないい形で一歩ずつ前進できたらと思います。
採用の話をすると、我々は現時点で計300億円くらいの規模の採択案件があり、これを達成するには今の3倍くらいの仲間が必要です。しかも、それは既に採択されている案件の話で、我々は2、3年中にさらに3倍、4倍の規模とすることを目指しています。となると直近で200名ほどはすぐに必要ですし、その先は1,000名くらいまでを視野に入れないといけません。自分たちだけでできるわけではありません。
さらに言うと、その仲間は自社だけで集める必要はなく、宇宙産業全体でつくっていくべきものだと思います。赤浦さんもそのような目線で当社以外にも様々な会社に出資し、サポートしていますし、志水さんとフォースタさんにも、産業全体の人材を育てていくという視線で取り組んでいただいています。そのような姿を拝見する度、我々も高みを目指して進んでいくことが大事だと思っています。
例え話をすると、私は自分を映画『ロード・オブ・ザ・リング』の中のホビットのような存在だと思っています。『ロード・オブ・ザ・リング』は世界が完全に闇で包まれ、敵の冥王と戦う話ですが、そこに駆り出されるのがホビットです。でも、ホビットは一番弱く、特殊能力もないのです。みんなが応援してくれて、最後に世界を救うことができる。私も一人では何かすごいことができるわけではありませんが、ビジョンを掲げ邁進していれば、ホビットのように仲間がどんどんついてきて応援してくれます。アークエッジ・スペースにも通じるところがあると感じています。
だから、赤浦さんはガンダルフかもしれませんね。『ロード・オブ・ザ・リング』にはガンダルフというすごい魔法使いが出て来て、そんな魔法が使えるならあなたがやればいいじゃないかと思うのですが(笑)、ホビットを応援します。先頭に立つのはホビット。この現実の世界では、私がこのミッションをやるのだなと思っています。
赤浦:魔法使いとしてホビットを応援したいです(笑)。
少し俯瞰した話をすると、宇宙業界には数々の会社が出てきていますが、どこも自然とつながってくるのです。なので、福代さんがおっしゃったように、何かこれをやろうと思ったときに全部自分でやる必要はありません。そこはやれる人が集まってきますし、やれる会社が協力してくれます。そのような意味で日本の宇宙産業は、一社で牛耳るスペースXとは違い、複数の会社があって必要に応じてうまく連携ができています。そのようなケースが増えてきています。
そのなかで一番多くの政府事業に採択されている中心的存在がアークエッジ・スペースです。私は「アークエッジ・スペースの万能感」と言っているのですが、アークエッジ・スペースなら何でもできるだろう、ホビットが何かやってくれるだろうという期待感があります。すると本当にやれる人、やれる会社が集まり、そこに協力関係が生まれて形になっていく。まさに福代さんはホビットですね。
これが、斎藤さんが実現したい「産業化」なのでしょう。フォースタートアップスの支援で各社に人が集まり、ホビットを中心として形になる。福代さんは本当に何か不思議なふわっとした感じの方なのですが、なぜかみんなが頼って福代さんと一緒にいたらうまくいくのではという気持ちになれます。そこにあの中須賀先生という日本のリーダーもいます。
そんな宇宙関連の各社に共通しているのは笑顔。みんなの笑顔を見てもらいたいです。本当いい人たちで、みんな素敵な笑顔をしています。
――楽しみですね。フォースタートアップスはどのように協業していきますか。
志水:フォースタの中で「宇宙産業」を最大のチームにします。もっと言うとフォースタだけで支援するのではなく、すべてのHR会社は、「宇宙を勝たせる」といって人を集わせるべきでしょう。私は、日本の競争力が生まれるときは、まずフォースタが先陣を切って、それをほかが真似すればいいと思うのです。結果として日本の特定の産業のためになるので、必ず我々が火をつけると決めています。
特に宇宙はこれだけ有力な皆さんが集い、ビッグゲームを起こそうとしています。ならば、勝たせることが絶対なので、我々もそこに注力します。注力するに相応しい産業です。産業の中心になるのはアークエッジ・スペース様だと思うので、福代さんの夢、そして赤浦さんの夢・志を私は応援したいです。
齋藤:その通りです。宇宙産業の中でアークエッジ・スペース様が台頭していくことで産業全体が盛り上がるでしょう。私たちも宇宙産業を支援することで、ほかのエージェント、人材紹介会社に対して宇宙産業にマーケットがあると表明することがとても重要だと考えています。私たちだけがやるのではなく、日本全体として勝たせなければいけない産業が宇宙産業であり、そのムーブメントをフォースタートアップスからつくっていきたいと思います。
――これから200人、1,000人と採用するとおっしゃいました。となると当然、既存産業からの移動も見込んでいますか。
福代:はい。ここはぜひアピールしたいポイントです。宇宙に関心があって、実際に宇宙産業に携わってきた方は当然として、まったく宇宙産業の経験がない方にもぜひ来てほしいです。従来の、いわゆるオールドスペース(またはエスタブリッシュドスペース)と呼ばれる官需型のプロジェクトで培った技術を、これからは民間のニュースペースと呼ばれる側で展開していくことは、国としても本当に重要なことだと思います。
と同時に、宇宙業界の外で要素技術で成果を出してきた方々も、間違いなく宇宙業界で活躍できます。なぜなら、地上で培った技術を宇宙に転用したときに、非常に革新的となるケースが珍しくないからです。実際、イーロン・マスクがすごいと言われていることの一つは、入手が容易な民生品をそのままロケットに搭載していることで、そのように旧来の狭義の宇宙産業の常識を壊すこともしています。そのように新たな力を結集してくことが必要です。
今、これまでの日本が地上で国を挙げて産業として育ててきた技術を、宇宙に転用していこうとしています。宇宙業界でトップランナーになるチャンスが目の前にあります。宇宙業界以外の方々にも、ぜひご応募いただきたいです。
齋藤:ありがとうございます。これからもぜひご一緒させてください。

(取材・文:山田 雅子 写真:塩川 雄也)