経済情報プラットフォーム『SPEEDA』、スタートアップ情報プラットフォーム『INITIAL』、ソーシャル経済メディア『NewsPicks』などを展開し、経済情報の力で誰もがビジネスを楽める世界をつくることを目指すユーザベース。そして成長産業支援を通じて日本の再成長を目指すフォースタートアップス。社会をアップデートし、明るい未来を実現しようとする点で同じ志を持つ両社が、スタートアップをめぐる課題や協業の可能性について語りあいます。
株式会社ユーザベース
代表取締役Co-CEO/CTO 稲垣 裕介氏
フォースタートアップス株式会社
代表取締役社長 志水 雄一郎
気づきがもたらす可能性と進化。情報を軸に日本をアップデートする両社
—— 会社のミッションやパーパス、事業内容などを教えてください。
志水:僕らのミッションは明確で、スタートアップを支援することで日本の再成長を実現する。さらに言うなら、ここから人類のイノベーションを起こせるなら、これほど素敵なことはないと思っています。だから実は、成長産業支援は目的ではなく手段です。今の日本は、競争力は世界34位1で、平均賃金はOECD加盟国中24位2。貧乏で、みんなが暗い顔をしています。エリートと呼ばれる人たちの中にも少なからず、日本の現状と未来がどうなるか、きちんと知らない人がいます。僕はそれを「知らない悪」と呼んでいます。そうなってしまった原因の一つは情報の透明性の低さ。情報が正しく伝わっていないことが多いのです。
みんなが生き生きとした顔をして過ごしていれば、子どもたちも「未来は捨てたもんじゃない」と思えるのに、今の日本はそうではない。僕はいくつかの大学で教えていますが、大学生たちも未来を明るいものだと思っていません。これは残酷です。本来、人は誰もが無限の可能性があるはずです。マーク・ザッカーバーグやイーロン・マスクも同じ人間です。違いは、彼らは後天的に努力し、気づきがあったこと。普通の人だって気づけば何でもなれるのです。そうできないのは学びと気づきが少ないからです。
「知らない悪」のいちばんの問題は、気づきがなく、結果として日本を衰退させていること。世界に目を向けると、新産業が気づきをもたらし、競争力と富を生むことによって進化、成長しています。だから、僕は新産業をつくることにフォーカスすることで、日本が元気になって一人でも多くの人が幸せになる社会をつくりたいと思いました。10年前にこのことに気づいて活動を始め、7年前にフォースタートアップス(当時は株式会社ネットジンザイバンク、以下フォースタ)を設立しました。
1*IMD「世界競争力年鑑2022」より
2*2021年OECD「平均賃金 (Average wage)」より
稲垣:今の志水さんの話に共感します。僕らも同じような思いでスタートし、「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」をパーパスに掲げています。志水さんは「知らない悪」とおっしゃいましたが、僕らも「知らない」ことは手段を持てない、苦しいことだと思っています。
僕らの原点は、経済情報プラットフォーム『SPEEDA』で、投資銀行やコンサルティング会社、企業の経営企画の人などが情報を得るのに困っていたところからスタートしました。何らかの方向性を決めるとき、本来は意思決定に時間をかけないといけないのに、情報の収集と分析に時間がかかる。その課題を解決したくて事業を立ち上げ、拡げてきました。
『SPEEDA』を世に出した後も、それを使うのは人なので、企業が意思決定できるツールだけでなく、人が習慣的に使うものをつくりたいと考えていました。当時、「ビジネスマンのgoogleみたいなものをつくりたい」と言っていて、実現できたのは5年後。2008年に創業し、5年後の2013年にソーシャル経済メディア『NewsPicks』をリリースしました。
情報にフォーカスしてきたのは、情報格差やそこから生じる「自分にはできない」という思い込みが、自分自身の成長にキャップをかけてしまうと思ったからです。実体験として、以前、僕は愛知県の片田舎に住んでいたので、インターンという言葉すら知らず、まともに挑戦もできませんでした。もちろん自分が悪いのですが、「もっといろいろな情報を知っていたら、いろいろな挑戦ができたのに」という思いもあります。今も、地域に行って多くの学生や社会人の方たちと話すと、「そんな可能性があるんですね」とワクワクする未来を感じ、チャンスがあるならつかみたいと思ってくれる方はたくさんいます。
創業当時から、僕らは、インフラとしていつでも情報がとれる状態をつくりたいと思ってやってきました。まず日本からスタートしましたが、人や情報は越境して共創するものです。都道府県を越え、国も越えて、知れば自分の可能性を信じられるような情報を提供することで価値を創出したいと考えています。
志水:データは、僕らも重視してきました。フォースタの設立趣意書には、「日本の再成長を実現するデータドリブンなハイブリッドキャピタルをつくる」と書いています。目指したのはセコイア・キャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツといった人もお金も出し、戦略も手がける世界的なベンチャーキャピタル。でも、日本はアメリカと比べると極わずかな人とお金しかありません。ならば未公開市場を可視化し、序列化し、優先順位を付けて日本の限られた人的資源、お金を集中投資するべきです。その仕組みづくりが、日本の未来をアップデートするスピードに連動します。だから、僕らはデータドリブンなチームになろうと考えました。
でも、未上場会社に情報開示義務はなく、可視化されていません。自分たちで可視化しようと思い、実現したのが2018年。それが『STARTUP DB』です。
稲垣:非公開企業のデータ整備状況は、本当に国によってまちまちです。基本的になかなか情報をとれない国が多いのですが、中でも日本はとれない。経済産業省の方などと話すと皆さん、整備が遅れていることは認識されています。僕らも、ここの情報をとりにいかないと成長できないと思ったので、スタートアップ情報に特化したプラットフォーム『INITIAL』を始めたという経緯です。
志水:スタートアップエコシステムに対して果たしている役割は、それぞれ違っています。
『STARTUP DB』はロボットエンジンを使ったり、ベンチャーキャピタルの皆さまからなど様々なネットワーキングで情報を得て、データをアップデートしています。僕らは、こうして集めたデータを活かしてスタートアップの競争力上位の会社に対して、経営幹部の組閣と組織づくり、大企業とのオープンイノベーションによるバリューアップ、ベンチャーキャピタルとしてフォロー投資などを提供するとともに、行政に働きかけて国策としてのスタートアップ支援を推進していくといった一連の事業を展開しています。データを中核として、強い会社を生み出そうとしているのがフォースタです。
稲垣:そうですね。僕らは情報をメインにしているので、公開情報をベースにして『INITIAL』をブラッシュアップしています。一方、『NewsPicks』はメディアなので、編集部による取材によるコンテンツを提供するほか、スタートアップサイドからは広告媒体として、多くの人から認知を取りたいというニーズをいただいています。スタートアップにとって認知は大きいので、そこはメディアとして支援していきたいと考えています。このように、フォースタさんとは違った角度から支援をしている形ですね。
スタートアップを取り巻く状況は進化するも諸外国と比べると惨敗状態。この5年が勝負
—— スタートアップが直面している課題について、お考えをお聞かせください。
稲垣:顕著に感じているのは、僕らが会社をつくった頃と比べると、資金調達が柔軟にできるようになったこと。調達金額は、シードからシリーズA、Bだと10倍は違います。当時は製品が完成した段階で2~3億円程度。今は、チームをつくった段階で2億円以上出ているのを見ています。当時とはまったく選択肢が違ってきています。ストックオプションや報酬も出しやすくなっているので、今、僕らも採用でスタートアップに競り負けるほど。挑戦できる人が増えるということで、これはいいことです。
ただ、そこからIPOに向かうところの金額は、これは体感ですが、それほど伸びていません。つまり、発射台が高いだけで伸びは緩やかであり、事業がしっかり伸びないとキツイということでもあります。そこを伸ばし切れているスタートアップがどれだけあるか、というのが懸念の一つです。
また、日本は諸外国と比べてスモールIPOが可能です。これも選択肢が増えているということですが、VCやCVCの資金が入っている以上は上場する必要があり、そのプレッシャーに加え、上場後の自由度がどれだけあるか、という点も疑問です。もちろん、事業を伸ばし続けられれば、選択肢はいくらでもありますが、苦しい局面になると選択肢を徐々に失うリスクもあり、経営者はここでどのように意思決定をするのか。
いずれにしても選択肢が増えていることは確かですが、それに伴う構造上の課題も出てきているのが実情です。実際、SaaSショックなどもありました。直近は戦争も含めて様々な市況の変化があり、今この瞬間にも苦しい会社は多いのではないかと懸念しています。
志水:僕自身はスタートアップに10年、フォースタとしては6年、関わっています。稲垣さんがおっしゃるように、日本のスタートアップを取り巻く環境は随分と進化しました。かつては日本の資金が、日本を素通りしてアメリカのスタートアップに流れるような事態も普通にありました。
今は違います。先日の日本ベンチャーキャピタル協会の総会には、岸田総理が会場に来て、「日本経済の持続的成長、そして、日本が直面する様々な社会課題の解決を担う主役は、スタートアップである」と宣言しました。経団連や同友会など経済団体がたくさんあるなかで、日本ベンチャーキャピタル協会はかつては非メジャーな団体でしたが、そこに日本の長が来て「主役はスタートアップだ」と言う。この環境変化は本当にすごいと思います。VC投資も確かに拡大し、今では約1兆円3に上ります。
このこと自体は喜ばしいですが、同じタイミングでアメリカの投資は約40兆円4。桁が違います。エコシステムの裾野の広さに差があり過ぎて、そこから次の数兆円、数十兆円の種が生まれるとしたら、将来にわたって日本はアメリカにボロ負けします。国内の対比ではよくなりましたが、世界と比べると依然として大変な負け戦です。
このような状況下で岸田首相は、2022年2月にスタートアップ創出元年と宣言し、夏の骨太方針にスタートアップ支援を入れ、本国会では、補正予算にスタートアップ支援関連の約1兆円が計上されました。スタートアップ育成5か年計画がここからスタートするというフェーズであり、世界各国がスタートアップ政策を進めてきたなかで、日本は遅ればせながら、やっと動き始めました。
ここで一人でも多くの優秀層が集い、本気でこの課題解決に挑まなかったら日本は終わります。それくらいのモード感で一人でも多くの人が起業、あるいは新産業をつくる側にまわる。世界で競争力を持つために責任を持つ。ここからの5年間はそのような時代であると覚悟しています。
3*STARTUP DB 2021年完全版_国内スタートアップ投資動向レポートより
4*CB Insights 2021 State of Venture Reportより
スタートアップよ、テクノロジーを駆使したプロダクトで世界を目指せ!
—— スタートアップの成長に必要なものは何だと思われますか。
稲垣:僕は、スタートアップの成長には、波及力をもって世界に広がっていくプロダクトが不可欠だと思っています。ただ、ここに大きな課題があります。
一つは言語バリア。日本が守られている要素であると同時に、世界に出られない原因にもなっています。ここを越えないと強い企業は生まれません。IPOの規模もここが壁になっている部分もあると思います。10月に僕らが開催したカンファレンス『CHANGE to HOPE 2022』では、Zoomのエリック・ヤンCEOに登壇してもらいました。企業体としてはウチより若いですが、世界的な企業になったZoom。それは、世界に波及力を持って浸透している素晴らしい製品を持っているからです。日本ももっと外に出ないといけません。
今、いろいろなスタートアップが、どうやって世界に出ようかと挑戦しているところです。ウチもそう。そのような会社が増えることは重要ですが、その手前にある問題が、世界的に普及するプロダクトを持てるかどうか。それは強いエンジニアチーム、デザイナーチームの存在にかかっています。もっと多くの企業が、世界に通用する強いプロダクトを作りに挑戦していく必要があると思っています。
もう一つがハードウェアとの接続。日本にはハードウェアのモノづくりの強さがあります。これは本当の素晴らしいアセットだと思っています。ただ間違うとハードウェア至上主義のようになってしまって、ソフトウェアとの融合が遅れてしまいます。僕の地元、愛知県では強いモノづくりの会社が多々あります。愛知県のエンジニアやモノづくりの会社の人たちとも議論したことがあるのですが、少し前までは、ハードウェアが強すぎて、ハードウェアに行けないエンジニア志望の人がソフトウェアのエンジニアになるような風潮があったと聞いています。これは強いハードウェアのアセットがあることの裏返しの構図ですが、今、テスラなどの新興企業ではその境がありません。ハードとソフトが一体化したものがどんどん出てきています。かつて、日本にはあれだけ強いハードウェアがありながら、ソフトウェアが追いつけなかったことは、実にもったいなかった。テクノロジーをどう駆使するか、この判断が経営と一体となって動いていれば、もっと可能性があったと思います。今後技術を理解しているエンジニアがもっと経営に入っていくことで解決していける余地が大きい領域だと思います。
ただ、日本ではまだまだエンジニア経営者が少なく、どうしてもテクノロジーと経営の間に距離があります。既存の産業の人も、新しく起業する会社のビジネスサイドの人も、もっとソフトウェア技術の近くに身を置き、世界に通じるプロダクトをつくっていけたら素晴らしい。そこを何か、僕らが支援できる道はないかと探っているところです。
志水:そこは根深いですね。教育に課題がありますから。本来なら文部科学省と経済産業省の縦割り行政ではなく、どのような競争力を持ち、どのような人材を育てるかという国の方針に基づき、そのために必要な能力を教えるという具合に逆算すべきです。しかし、未だにそこは縦割りです。結果、社会に出すために必要な教育ができていないように感じます。エンジニアだって、世界で競争力を持てる人材を育てるべきなのに、いまだに日本の、しかもかつてのポートフォリオに紐づいた教育しか行われていません。これでは、人は気づきを得ることができません。
聞いた話ですが、アメリカはエンジニアが大変な売り手市場で、採用企業側が条件を釣り上げていくと、最後は行きつくところまで行って提示額が一緒になるそうです。するとどうなるか。エンジニアは「御社はどのような未来をつくるために、私の能力を使うのですか」と問い、最後はミッション、ビジョン、パーパスで選ぶというのです。なるほどと思いました。結局、存在意義に行きつくと。日本はそのような勝負ができていませんし、仮にエンジニアに対して「こんな世界観を実現したいから、一緒にやろう」と言っても、気づきを得ないままに来たエンジニアだと、正しく判断できないでしょう。これでは、競争力あるプロダクトやチームが生まれにくいのではないかと思います。
—— となると、ビジネスサイドも技術知識をもったほうがいいでしょうか。
稲垣:いきなりすべてを理解することは難しいですけど、技術サイドとの対話はもっと活発にされていくほうがいいでしょうね。
志水:それは本当にその通りです。
稲垣:現状は、特に投資の場や経営会議の場で技術の話をすることは少ないと思います。でも、本来は話さないと判断がつかないと思うので、もっと対話をするべきです。
ユーザベースのユニークな取り組み
楽しみながら技術リテラシーを上げる『Play Engineering』
—— 社内で、ビジネスサイドが技術面のリテラシーを高める取組はされていますか。
稲垣:今、まさに取り組んでいるところです。「ビジネスを楽しめる世界」という当社のパーパスにちなみ、『Play Engineering』と名付けて、ビジネスサイドのメンバーの技術習得を支援しています。SQLや自動化処理などの研修プログラムを設けて、修得できたら給与にも上乗せする仕組みです。この取り組みを通じて技術を知り、技術を楽しんでほしいと思っています。
成果は表れていて、先日はコードを書けなかったマネジメントサポートのメンバーが、僕のカレンダーの重複を自動で抽出して、重複をどうするか聞いてくる仕組みをつくってくれました。こんなにできるようになったかと、思いのほか感動してしまいました。会社が支援してDX人材になるようなイメージですね。もう少し敷居を下げて、メンバーがオフィスに子どもも連れて参加できる親子プログラミング教室も開催したりして、楽しくやっています。
—— 楽しもうと思って始めたのですか。それとももっと深い意図があったのでしょうか。
稲垣:いちばんの理由は、このままでは技術者が足りなくなると思ったことです。何とかするには技術者の仕事を減らすか、技術者を採用しやすくするか。この2つです。この仕組みなら、技術者は自分の技術を還元することで給与が上がり、長期的には負担の軽減にもなるはずだと思ってスタートしました。
志水:いいですね。社内リスキリングですね。
稲垣:さすがに一気にエンジニアに転身とまではいきませんが、ビジネスポジションのメンバーが自ら研修をやる側にまわることも出てきました。自分でSQLを書けるとマーケティングにも役立ちますし、エンジニアを頼らなくてもこのあたりが自分でできるようになっています。
—— フォースタはどうですか。技術面のリテラシー向上策などはされていますか。
志水:まだ組織も小さかった頃、エンジニアを支援するにはエンジニアの理解が必要だと言って、みんなでコーディングの勉強をしていました。稲垣さんのお話を聞いて、また、そのようなカルチャーが生まれてもいいかなと思いました。
社外に対しての取り組みにはなりますが、エンジニア採用に特化した「エンジニアプロデュース室」を設け、そのメンバーはより専門知識や情報を取得したり、エンジニア採用の強化に努めています。ご支援した方にインタビューをして、CTO、VPoE、EM、テックリードなど、エンジニアの多様なロールモデルを発信する「HEROES」というオウンドメディアも運営しています。
また、会社の枠を超えたエンジニアのコミュニティづくりにも取り組んでいます。能力向上の方法や、日々のエンジニアリングで出会う課題などを共有しながら、前向きな未来を一緒につくろうという意図です。コミュニティなどエンジニアに特化した何かしらの取り組みは、やはりスタートアップ支援において外せないポイントだと思います。スタートアップエコシステムの半分はエンジニアで、稲垣さんもおっしゃるように、成長の源泉となる非常に重要な役割を担っていますから。
稲垣:そうですね。今、人材供給はいちばんのペインポイントで、本当にエンジニアの方が足りません。日本のエンジニアは優秀なのに、世界的に見て残念な意味で安い。外資大手のITだと、平均して2000万円~3000万円のオファーが出るので、このままではまずいと思います。
ユーザベース×フォースタにできること。地方創生や日本のプレゼンス向上に貢献へ
志水:エンジニアコミュニティの活動は、ユーザベースさんとも協力しあいながらできることがありそうです。元々、僕らは敵ではありません。むしろ目指す世界やマインドはかなり近い。社会や未来がよくなるために、一緒にできることはいろいろあると思います。
エンジニアの領域だけでなく、地方創生の領域でも何かできそうです。今、全国各地で選定されているスタートアップの拠点都市のインキュベーションプログラムには、ほぼフォースタが絡んでいます。というのも、ほかにできるチームがないからで、入札権限さえクリアできれば、シンクタンクなどと戦っても負けません。ユーザベースとフォースタの共同体なら、そのようなプログラムをもっとよくできると思います。どこも我々に勝てない。
稲垣:僕も同じことを言おうとしていました。地域のスタートアップは、シンプルに人とお金、出資ではなく売上に困っています。オープンイノベーションもうまく売上に結びつけられないことが多く、そこに対してウチなら大企業とのハブにもなれますし、インキュベーション施設などのハードを持っているところには、ウチのソフトがあるとやりやすい。
今、まさに地域でインキュベーション施設をつくるから、ソフト面で一緒にできないかという話が来ています。それも一つではなく、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡などあちこちで進んでいます。ハコだけつくっても人は集まらないので、コミュニティーとして活性化することと、外の世界とつながることが非常に重要です。そこは東京の企業で、メディアと人を押さえている我々が貢献できる面は大きいと思います。
僕らはメディアがメインなので、スタートアップを盛り上げていく施策は、イベントなども含めてフォースタさんとご一緒できることは多いかなと思います。
志水:解決しなければいけない課題は共通なので、それを違う角度で解決する両社が手を組んだら、みんな嬉しいと思いますよ。今日のこの場をきっかけに、絡めることは絡んでいけるといいですね。
稲垣:その通りです。競う部分は健全に競えばいいだけで、一緒にできるところは一緒に。
志水:組み合わさるといいことはたくさんありそうです。あと、2023年はやはり、スタートアップ育成5か年計画の初年度なので、みんなで協力しあってしっかりと動かしていくことが重要だと思います。2024年度から動く施策などもあるので、この準備期間の助走をどう産官学で連携してやっていくか、非常に大事な1年になります。
稲垣:そうですね。我々は、『NewsPicks』を使って、スタートアップ業界に向けた情報発信を強めたいと考えています。メディアとしてもっとエッジをきかせ、よりスタートアップに特化した記事コンテンツなども出していきたいと思っています。
一方で、リアルの盛り上げも大事になるので、そこは一緒にできるかもしれません。実際、「この両社が組んでやればもっといいものができるのに」と思うカンファレンスもあります。
志水:それは思います。一時、海外の有名カンファレンスの権利を買おうかとも思いましたが、今は、自分たちでグローバルカンファレンスもつくれてしまいます。実際、2022年12月にオンラインで開催した国内最大の成長産業カンファレンスも、錚々たる顔ぶれがそろいました。世界の投資家と日本のスタートアップが出会う場のプロデュースは僕らもできるし、ユーザベースさんもできる。一緒にビッグなものを獲りにいってもいい。
稲垣:もちろん無理にくっつけなくてもいいのですが、いろいろなやり方がありそうです。
志水:別々にやるにしても、同じタイミングがいい気がします。僕が考えているのは世界中から日本に人が集まるようなスタートアップのイベントです。政府と決めて、大きなカンファレンスが2つか3つあって、グローバルのスタートアップネットワークが集結するものをできるといいと思います。
稲垣:それはおもしろいですね。本気で考えましょう。グローバルの登壇者や参加者にとってのメリットは大きいですし。きちんと盛り上げて日本をアピールしないと、それこそ僕と志水さんで競っている場合ではありません。そんなの世界からみたら小さい戦いなので。
志水:本当にそうです。丸の内バージョンはユーザベースで、渋谷か虎ノ門のバージョンはフォースタで。是非やりましょう。
稲垣:是非!
—— いろいろな共創が生まれそうで楽しみです。両社の今後の活躍に期待しています。今日はありがとうございました。